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オーディオは音楽を聴くことに併せ、音を味わう世界である。1982年にCDがスタートし、アナログからデジタルへと大きく移行した現在だが、良い音を求めるオーディオファンの気持ちは変わることがない。

そのCDも、スタート当初は諸手を挙げて賛同するというよりも、既に高い完成度にあったアナログディスクやアナログシステムに後ろ髪を引かれた人が少なくない。以来、デジタル・アナログ・コンバーターの変換精度を高めるなどさまざまな技術開発の結果、大きな進化を遂げるに至ったが、CDのディスクそのものに対してまでは、なかなか目の届く状況ではなく、ボク自身もディスク製造の現場や素材などに関心を寄せるには至らなかった。

しかし、近年ではHQCDを始めとするPREMIUM CDが話題を集め、音質向上に一役も二役も駆っている。そして、オーディオファンはCDの製造や素材に関心を持つようになっている。現存する最良の素材である光学用ガラスが使われたクリスタルCDは、限りなくマスターに近く、全体の音抜け感が高くなりその結果、解像度が高まって聴感的な歪みが抑えられ、柔らかで滑らかなサウンドが得られる。
オーケストラでは第一ヴァイオリン群の奏でる音がひとつになり、艶やかに輝きを聴かせるが、一人一人の音が集合してひとつの響きを構成している、という当たり前のことを、改めて感じさせるような解像力の高さである。広い音場空間のなかに、弦楽器や木管、ブラス、そして最後部のティンパニーや打楽器類というオーケストラ空間のリアリティは、やはりクリスタルCDならではの世界を聴かせるものである。

クリスタルCDは、もともと光ピックアップの調整用ディスクとして作られ、その製造には手間ひまかけた高い精度が要求されたと聴くが、現在では金の反射膜が使われ、近い将来には量産可能なレベルにこぎつけるという。

オーディオの世界にはいくつもの夢があるが、まさに現実になろうとしているそのひとつが、このクリスタルCDである。

石田善之(いしだ・よしゆき)

【プロフィール】
日本大学芸術学部放送学科卒業。オーディオ評論家として、また音楽ファンとしての視点を大切にしながら 広くオーディオの魅力を伝える。現在は、レコード芸術、stereo(株式会社音楽之友社)、 Swing Journal(スイングジャーナル社)、AudioAccessory、analog (株式会社音元出版) AUDIO BASIC (共同通信社)、ラジオ技術(株式会社アイエー出版)等にレギュラーで寄稿。 その活動は執筆だけにとどまらず、ファンを巻き込んだオーディオメーカーとの共同のイベント開催や、 オーディオに携わる探究心から、工場見学などのフィールドワークにも及ぶ。

メモリーテックは、技術で音にこだわります。