■ CDやHQCDとの違い
CDやHQCDはインジェクション成形だけど、クリスタルディスクは2P成形。(後ほど詳細説明)これが一番の違いです。しかも基盤がフラット。
さらに、温度・湿度に強いという点がどのような利点になるかというと、夏の暑い時も冬の寒い時も再生状態は一緒ということ。半永久的に保持できるかというと、今のCDに比べるとずっと耐久性はあります。何年持つかというと…誰もそこまでまだ生きていないからわからない。(笑)CDは初期に生産された物のほんの一部に、反射膜のアルミが劣化してしまうという症例はありますが、初期のものでも今でもちゃんとしている。CDが誕生して25年位たちますが、今もちゃんとしているのだから、クリスタルディスクは、そういう意味でCDよりは確実に長く保持できるといえます。
―2P成形法―
最初は、従来のソニーが作ったロールコーター方式(スタンパーに樹脂を流して、上にガラスを置いて、その上からゴムロールで樹脂を広げる)でした。でも、そうすると樹脂が当然波打ったようになってしまった。今回はスタンパーの上に樹脂をのせて、上にガラスを置いて、遠心力で樹脂を均等に広げる方法を採用しました。もともとこの2P法というのはCDが誕生する前のLDの時代からありました。余談ですが、約30年前にイギリスのマンチェスターから、車で1,2時間程北東に行ったところにブラックバーンと言う町がありPHILIPS社の電球工場があって、その一角で2P成形でLDを作っているのを見学した事があります。
その2P法の良い点は、例えば金属源盤(スタンパー)にピットが記録されている凹凸があるところに水をたらしたら、ピットの隅々まで、隙間無く水が入ります。それで、その水が固まったとしたら、ほぼ完全に転写したと言えるでしょう。ところが、インジェクション方式は、スタンパーに粘度のある溶けたポリカーボ樹脂を流して、冷却後取り出すので、ピットの隅々まで樹脂が回らない。この違いが、音質の差としてあらわれる原因の一つであると考えています。そして、インジェクションで作るよりも特性がいいものを、と考えた時に2P法に行き着いたわけです。転写率をデータで出す際に、技術的に2P法で作った物の、ある電気特性を測定し、それを100とし、インジェクションで作った物のある電気特性を測定しそれと比べて転写率と称した事がありました。2P法はピットの転写性がよいということが数値で実証できたのです。しかし、弱点は、インジェクション方式と比較し量産性については勝てないのが現状です。
昔、CDよりも先に誕生した30センチ盤のLDがありました。実は時々ガラスでも作っていたんですよ。LDはPMMAと言う柔らかい樹脂を使っていました。ポリカに比べて吸湿し易く長時間プレーヤーにかけているとディスクがぐにゃぐにゃになってしまう。そうすると1日に何度もかける様な博物館などの展示用には向かなかったのです。そういった1、2枚だけ欲しいというお客さん向けに、ガラス基板に2P成形で作っていたんです。
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―品質・音質への技術側面からのこだわり―
より良い音を探して、メモリーテック内で「音質委員会」というのを作って、皆で研究してきました。そのいろいろな模索の中で、クリスタルディスクの特徴となる基軸を選んできたのです。
ひとつは2P法によって、スタンパーからの転写性を上げる。もうひとつは、やはりガラスは複屈折がないから、光は位相が乱れることなく、そのままかえってくる。そのようなことが合わさって良い音になる。だが、データに表そうと色々試みたがとても難しい。必ずしもデータ上の結果だけをみて、音質が向上したとは言い切れない部分もある。やはり音楽は、最終的には人の感覚で感じるものですから。
また、どうして今回、反射膜に金を使ったかというと、アルミ、銀、金の3つの金属でためしたところ金がマスターにより近いことが分かった。ただし金や銀の本当のよさを引き出すためにはそれなりのノウハウも必要である。ただ単に「金だから、銀をだから」音がよくなるということでは無いという事が分かりました。やはりその良さや特性を引き出す技術があっての金や銀、ということです。金や銀は、プラズマ共鳴(※)という、効果があり、それを参考にしました。
また、再生環境に関してなのですが、もちろん、重量その他の条件もCDの規格は全て満たしています。ただ、パソコンに搭載しているドライブの設計基準がどうなっているか分かりかねる部分があります。クリスタルディスクを折角聞くなら、できれば普通のCDプレーヤーで再生するのをお勧めします。これまでのCDとの、違いを感じてほしいですしね。
※プラズマ共鳴:金属ナノ粒子、特に銀や金の粒子はプラズマ共鳴によって光と強く相互作用する。近年これを応用へ繋げる研究が盛んに行なわ れており、プラズモニクスと呼ばれるようになってきた。
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